MDIによる健康障害とは? それを防ぐ方法と特殊健診について

化学物質

我が社ではMDIを取り扱っています

 私が勤めている会社では、MDIという物質を取り扱っている工程があります。

 MDIは適切に扱わないと、体にとって有害であるため産業医としては気をつけなければならない化学物質の一つです。

MDIとは何の略?

 そもそもMDIとは何の略でしょう。なかなかぱっと答えられる人は少ないのではないでしょうか。私も時間が経つとちょっとあやふやになってしまいます。

 MDIはMethylene diphenyl diisocyanate(メチレンジフェニルジイソシアネート)の略です。ジフェニルメタンジイソシアネートとも言います。

 2つのカタカナを見ると全然違うように見えますが、どちらも同じものを表しています。

 実はMDIには、2,2′-MDI、2,4′-MDI、4,4′-MDIの3種類があります。下の図のN=C=Oが六角形に付く位置が違うのです。

 このうち 4,4′-MDI というものが世の中で最も広く使われています。

 

4,4′-MDI

MDIは何に使われているの?

 MDIはポリウレタンの製造によく使われています。

 ポリウレタンは合成樹脂(プラスチック)の一種です。クッションや寝具に使われる柔らかいスポンジ状のものから、冷蔵庫の断熱材に使われる硬いもの、またはゴム状のものなど多種多様なものがあります。

 MDIはそのポリウレタンの原料となるものなので、多くの工場や事業所で取り扱われています。

 私が勤務する企業の工場でもMDIを使用している工程があります。

MDIによる体に対する影響

 MDIは刺激性のある物質です。そのため、MDIが体の粘膜や皮膚が触れるといろいろな障害が起こります。

 その中でもMDIによる障害が起こりやすい場所は呼吸器、皮膚、眼の3箇所です。

 それぞれの具体的な症状は、

  ・呼吸器:のどの痛み、のどの違和感、咳、痰、呼吸困難、喘鳴

  ・眼:眼の痛み

  ・皮膚:湿疹、皮膚の痛み、かゆみ

 その中でも最も気をつけなければならないのが呼吸器への障害です。MDIに長期間、過剰にさらされてしまうとアレルギーや喘息を引き起こすことが知られています。

  MDIを使っている事業所では、これらの健康障害を防ぐための対策を立てなければなりません。

MDIによる健康障害を防ぐための対策

 まず、MDIをなるべく外に広げないために局所排気装置を備えなければなりません。そして、防毒マスクなどの呼吸用保護具をつけて吸い込まないようにしましょう。

 皮膚を守るために保護衣、保護手袋、保護面を使用してなるべく皮膚の露出を少なくすることを考えます。

 そして、眼を守るために保護めがねを使用します。

 どの保護具にも共通することですが、汚染された保護具は安易に作業場から出してはいけません。再度使用する場合はしっかりと洗い、汚れを取り除いてから使うようにしましょう。

特殊健康診断を受けましょう

 MDIは労働安全衛生法による指定はありませんが、行政からの通達により特殊健康診断を受けることを指導勧奨されています。

 なので、義務というわけではありませんが、私の事業所では常時MDIを取り扱っている作業者は受けてもらっています。

 ちなみに、頻度は6カ月に1回なので、定期健康診断よりも頻度は多いです。

 MDIに対する特殊健康診断の一次健診は以下の3項目です。

 ・自覚症状の有無

 ・皮膚の変化

 ・胸部理学的検査

 これらの一次健診で引っかかって、なおかつ業務との関連が疑われる場合は二次健診に進みます。業務と関係ない所見であれば二次健診を行う必要はありません。

 二次健診は以下の6項目です。

 ・職歴調査

 ・現症に関する問診・視診

 ・胸部理学的検査

 ・狭窄性換気機能検査

 ・胸部レントゲン写真

 ・その他(肝機能、腎機能などの検査)

 MDIに対する特殊健康診断で、異常を認める頻度は低いのですが、低いからといって油断はできません。

 万が一、異常な結果が出た場合は、配置転換を含む当該作業者への対応と、MDIに関する作業や作業環境の見直しを行わなくてはなりません。

MDIに対しても

 ・作業環境管理(局所排気装置)

 ・作業管理(保護具)

 ・健康管理(特殊健康診断)

これをしっかりやりましょう!

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