有機溶剤の特殊健診 尿を採る時間にご注意を

化学物質

特殊健康診断での尿検査 いつ採取してもいいの?

 有機溶剤の特殊健診で行われる尿検査。この尿検査の目的は、有機溶剤の代謝物(分解されたもの)の濃度を調べて、その人が有機溶剤にどれくらいさらされているかを評価するためです。

 尿検査で高い数値が出た場合は、有機溶剤に多くさらされている可能性があるので、作業や作業している環境が適切であるかどうかをチェックしなくてはなりません。

 有機溶剤の尿検査は、健康被害を防ぐための大事な検査です。その大事な検査が正確に行われていない可能性があります。それは尿を採る時間が適切でないからです。

 今回は「特殊健診で行われる有機溶剤の尿検査で、いつ尿を採るべきか」について取り上げたいと思います。

健康診断を受ける時間

 健康診断で行う検査の中には食事によって影響を受けるものがあります。代表的なものは血糖です。血糖値は空腹時と食後では大きな違いがあります。

 健診で血糖を測る場合は空腹時に行います。 また、定期健診には含まれていませんが、胃がん検診も空腹時に行われます。

 これらの検査は空腹時に行わなければ正確な評価ができません。そのため、企業での定期検診は午前中に行うことが多いです。その都合に合わせて、特殊健診も午前中に行われることが多いのが実情です。

 しかし、特殊健診で行われる有機溶剤の尿検査も同じように午前中に行っても良いのでしょうか。

有機溶剤の尿検査は採る時間が決まっている

 さっそく結論から申し上げると、有機溶剤の尿検査は採る時間が決まっています。この決められた時間に採らなければ正確な評価ができません。

 午前中に尿検査を行っている場合は正確な評価ができていない可能性がかなり高いです。その理由を説明していきます。

有機溶剤の代謝と排泄のスピードに注目

 有機溶剤の尿検査では、有機溶剤の代謝物を測定しています。代謝物の濃度を測ることで有機溶剤がどれだけ体の中に取り込まれたかを評価します。

 有機溶剤の代謝物は半減期が短いという特徴があります。半減期が短いので早く代謝、排泄され体の中から消えていきます。

 そして、有機溶剤に関する規則では次のようなことが定められています。

尿の採取時期について

 尿の採取時期は、尿中の有機溶剤の代謝物の濃度が最も高値を示す時期とすべきものである。

基発第462号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令、有機溶剤中毒予防規則の一部を改正する省令及び鉛中毒予防規則の一部を改正する省令等の施行について」

 有機溶剤の尿検査は、有機溶剤が一番体の中に取り込まれている時間に行わなければならないとされています。

 有機溶剤が代謝、排泄された後に尿検査をしていては遅いということです。

 ここで少人数ではありますが(株)近畿エコサイエンスが行った、尿の採取時間による検査値の違いをご紹介します。

 トルエンにどれだけさらされているかを評価するために測定するのが尿中の馬尿酸という物質です。午前中と作業終了時の馬尿酸の数値を比べると2倍から5倍の違いがあります。

 これは馬尿酸の代謝、排泄のスピードが早いため、翌日には体内から多くがなくなっているからです。

 この検査は尿中馬尿酸の値により分布1から分布3の3段階に分けられています。分布1、分布2、分布3の順番でトルエンの体の中への取り込みが多いことを示しています。

(尿中馬尿酸)g/L
分布1 1.00以下
分布2 1.01~2.50
分布3 2.51以上

 先ほどのデータをこれに照らし合わせると、午前中健診時に行った値だと分布1ですが、作業終了時に行うと分布2となります。

 分布1と分布2では行う対策が変わってくるので採取時間がとても大事であることが分かると思います。

具体的な尿の採取時間

 具体的な尿の採取時間については、平成元年8月22日基発463号にて指針が出されています。以下がそれを表にしたものです。

 「馬尿酸~N-メチルホルムアミド」と「トリクロル酢酸総三塩化物」の違いは、それぞれのグループ間で半減期が長さが違うからです。

 作業終了時に採尿するというのはどちらにも共通しており、これが最も大事なポイントとなります。

有機溶剤の尿検査は作業終了時に行う

 有機溶剤は適切に取り扱わなければ有害になり得ます。特殊健康診断はそれを防ぐための重要な方法の一つです。

 そのため適切な検査を行い、その結果に基づき対応しなければなりません。

 有機溶剤の尿検査は作業終了時、これを忘れないようにしてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました