よく分かる 甲状腺の血液検査の見方 ~FT3、FT4とTSHはシーソーの関係~

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はじめに

甲状腺の病気には「甲状腺機能異常」と「甲状腺腫瘍」の2種類があります。

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甲状腺の病気を診断するために必要な検査は『血液検査』と『超音波(エコー)検査』の2つです。この2つの検査を行えば、ほぼ全ての甲状腺の病気について診断がつくといっても言い過ぎではありません。

そして、診断がつくだけではなく、

(治療前なら)治療が必要な状態なのか?
(治療中なら)治療がうまく行っているのかどうか? 薬の量、治療の方法を変更した方が良いのか?
(治療終了後なら)再発はないだろうか?

など、経過を見る際も、『血液検査』と『超音波検査』がとても役立ちます。

今回は甲状腺の血液検査について、できるだけ分かりやすく解説をしたいと思います。

甲状腺の血液検査

甲状腺の血液検査の目的は、2つです。

1. 甲状腺機能(甲状腺ホルモン)の状態を調べる
2. 甲状腺に対する自己抗体の有無について調べる

甲状腺機能(甲状腺ホルモン)の状態を調べる

甲状腺機能を調べるには、血液検査でホルモンの量を測定します。

甲状腺機能に関わるホルモンは3種類です。FreeT3(FT3)、FreeT4(FT4)、TSHの3つです。

FT3とFT4は甲状腺から分泌されるホルモン、TSHは下垂体から分泌されるホルモンです。これら3つのホルモンの量を測れば、甲状腺機能がどのような状態かを判定することができます。

《Point》
・FT3、FT4 は甲状腺のホルモン
・TSH は下垂体のホルモン

FT3、FT4とTSHはシーソーの関係

無題

甲状腺ホルモン(FT3,FT4)と下垂体ホルモン(TSH)はシーソーの関係にあります。これは甲状腺機能を理解する上でとても大切なことなので、ぜひ覚えて欲しいです。

下垂体とTSHの役割

まずは下垂体とTSHの役割について説明しましょう。

TSHというのは「甲状腺刺激ホルモン」の略です。文字通り甲状腺を刺激して、甲状腺から甲状腺ホルモン(FT3,FT4)を出させるホルモンです。

下垂体は脳の中にある臓器です。下垂体はTSHというホルモンを使って、甲状腺をコントロール(調節)する役割を担っています。

(1) 甲状腺ホルモンの量が多すぎる場合(FT3、FT4が高い場合)
TSHの分泌を減らし、甲状腺に対する刺激を少なくし、甲状腺ホルモンを減らそうとします→TSHが低くなる

(2) 甲状腺ホルモンの量が少ない場合(FT3、FT4が低い場合)
TSHの分泌を増やし、甲状腺に対する刺激を増やし、甲状腺ホルモンを増やそうとします→TSHが高くなる

(3) 甲状腺ホルモンが正常の場合(FT3、FT4が正常の場合)
甲状腺ホルモンが正常の範囲内であれば、TSHも正常の範囲内に保たれます。

まとめますと、
(1) 甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が多い→TSHが少なくなる
(2) 甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が少ない→TSHが多くなる
(3) 甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が正常→TSHも正常

このように下垂体は甲状腺ホルモンの量についての情報をキャッチし、それを正常に保つためにTSHというホルモンを使って、甲状腺をコントロールしているのです。

甲状腺のホルモンが多いとTSHが少なくなる、甲状腺のホルモンが少ないとTSHが多くなる。いわゆるシーソーに似た関係なのです。

ここまで来れば分かると思いますが、
甲状腺機能亢進症は(1)の状態なので、FT3,FT4が高く、TSHが低くなります。そして、甲状腺機能低下症は(2)の状態なので、FT3,FT4が低く、TSHが高くなります。

血液検査を行い、FT3、FT4、TSHを測れば、甲状腺機能が正常か、亢進しているか、低下しているかが分かるというのは、こういう仕組みになっているからです。

《Point》
・下垂体ホルモン(TSH)が甲状腺ホルモン(FT3、FT4)をコントロールしている
・下垂体ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(FT3、FT4)はシーソーの関係にある
・甲状腺機能亢進症の場合 FT3↑、FT4↑、TSH↓
・甲状腺機能低下症の場合 FT3↓、FT4↓、TSH↑

甲状腺自己抗体を測る

甲状腺機能についての説明だけで、かなり長くなってしまいましたが、血液検査でもう一つ大事な項目、それが甲状腺に対する自己抗体の検査です。

自己抗体とは

通常、抗体は細菌やウイルスなどが体内に入ってきた時に、それを攻撃して体を守る働きがあります。抗体は外敵(異物)から体を守ってくれる良いものなのです。

しかし、自己抗体というのは自分の体を異物として認識し抗体を作ってしまうものです。この自己抗体は自分の体を標的として攻撃するので、体にとっては害になってしまう大変やっかいなものです。

甲状腺の自己抗体(TRAb、抗TPO抗体、抗Tg抗体

自己抗体のうち、甲状腺に対する自己抗体もあります。残念ながらその頻度は高く、5人に1人は甲状腺の自己抗体があると言われています。特に女性に多いです。

診療の場で出てくる代表的な甲状腺自己抗体は3つです。
・TRAb(抗TSHレセプター抗体)
・抗TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)
・抗Tg抗体(抗サイログロブリン抗体)

TRAbはバセドウ病で、抗TPO抗体、抗Tg抗体は橋本病の場合に陽性となります。なので、どの抗体が陽性であるかを検査することによって、診断をつけることができます。

また、同じ抗体なのですが、
・バセドウ病で陽性となるTRAbは甲状腺を刺激する作用
・橋本病で陽性となる抗TPO抗体、抗Tg抗体は甲状腺を抑制する作用

というように正反対の作用を表します。

そして、現在の医療ではなぜこのような自己抗体が体にできてしまうのかという原因についてはまだはっきりと分かっていません。

《Point》
・甲状腺自己抗体を調べることによって、バセドウ病、橋本病の診断をすることができる。

甲状腺の血液検査 まとめ

・FT3、FT4、TSHを測れば甲状腺機能の状態が分かる(=正常なのか、亢進しているか、低下しているか)

・甲状腺自己抗体を測れば、バセドウ病と橋本病の診断をすることができる。

血液検査は「甲状腺機能異常」の診断、治療にとても重要な役割を果たしているので、検査結果の見方を知っておくと有用だと思います。

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